[川の絵]

あの絵描き　昼も夜も　筆を動かし続ける

何を描く　頭の中　灯火がゆらめいている

 

流れる川　に浮かんだ　彼女の姿を描く

遠ざかって行く　指の間をすり抜けて

 

もう　戻らない。

 

あの絵描き　昼も夜も　考え淀んでる

何を思う　頭の中　暗い夜を詰め込んで

 

あの　はい　は　いいえ　だったのか？

 

答えは　箱の中。

 

あの絵描き　昼も夜も　筆を動かし続ける

何を描く　頭の中　の景色を色に乗せる

 

もう　戻らなくても。

[ミミズク]

夜と昼の狭間に住み

静かに耳を澄ませているミミズク

 

人は寝静まり　夜行性の夢が

顔を出す　浮かび上がる

 

誰かの祈り　誰かの悲しみ

その耳で　嗅ぎ取って

はばたくよ

 

大きな光る瞳

サテライトのように

夜のスキマ迷い込んだ

行き場のないその心

照らすよ

 

ホゥ　ホゥ…

[歌姫とハーメルンの森]

森の中　分け入って　深いところ　目指してる
彼女は歌姫　声を捨てた
やさしいだけの歌　歌うのは　もうやめにした

誰のため　歌うのか　そのわけを　落とし物
「私のための歌を作りましょう」
そのための　場所を探し　たどり着いた

空は見えず　光も届かない　森の底
うつろいながら　探している
心の中　一番奥に降りていこう
何があるのだろう

夜なのか　昼なのか　遠いのか　近いのか
明日は今日　今日は昨日　わからない森の中
出会ったのは　笛を捨てた　笛吹きの男

「連れて行きたいのは　たった一人だけ　それがわかったんだ」

はにかむ男に　彼女は思う
「私には何がある？」

空は見えず　光も届かない　森の底
うつろいながら　探している
心の中　一番奥に降りてみても
何もないのだろう

心はもうここにあらず　体だけさまよい歩く
それでも笛の音について　いくようには生きられない

私のための歌はどこに　わからない　わからない　けれど
あの男の笑顔のような歌を歌いたい
そう思った

心に迷いの森を持つ　全ての人へ歌う歌を